フラジェントル

YUKI&ASUKAによるリレー小説

第6話 「現」

 「はい、これで全部だよね」
差し出された果物を受け取りながら少女は初めて少年の顔を見た。

少女は目を見開き、驚いた表情をした。
「あなたは…」
彼は満面の笑顔をむけた。
「僕の名前はルテ。君は?」

少女はルテから目をそらすと、黙って歩いていってしまった。
「あ、待ってよー」
ルテは後を追った。
「ねぇ、君の名前はなんていうの?」
「…」
「…」
「…」

「…僕の名前は」
「聞こえてるから」
「あ、やっと口きいてくれた」
ルテはまたにこっと笑う。少女は立ち止まった。
「…エマ」
「え?」
「私の名前。」

エマは冷ややかな目を向けて言い放った。
「もうついてこないでくれる?迷惑だから。」

大きく振り返ってエマは人ごみに消えていった。
「あ、いっちゃった」
小さくなるエマを見ながらルテはつぶやいた。
「エマかぁ。僕はすごい幸運の持ち主かもしれないな。昨日会った女の子にまた偶然会っちゃうなんて!」
***

エマは早足で帰った。
普段あまり感情に変化がない自分が動揺していることに驚いた。そして落ち着くための対処法も分からない。
はたから見れば、動揺している風には見えないのだが。

(あれは夢ではなかったの?あの人は…空から来たの…?)


(まさか…ね。)
エマは食材を母親に渡し、草原に行くと言ってまた家をでた。