フラジェントル

YUKI&ASUKAによるリレー小説

第7話 「再会」

エマはいつもの草原へ向かい歩いていた。
ザクザクと草を踏みながら頭は反対にいつもとは違うことを考えていた。
(ルテ……だっけ…あの人も夢の中ではこの草原に…)
手前から大きな木の姿が見えてくると、どことなく歩みを遅らせていた。
(もしかしたら…)
トクトクといつもより騒がしく鳴る胸に手をあてて木の元へ向かい、ゆっくりと辺りを見回したがそこには誰も居なかった。
「………やっぱ夢か…」
どこか残念な声色で呟くと、木の下の所定の場所にどさっと身を投げては寝転がって空を見上げた。
木の葉が夜風に揺れる音と夜空にきらきらと軌跡を残して走る列車の汽笛を聴きながらゆっくりと瞼を下ろそうとした瞬間…

「夢じゃないよ?」

閉じかけのエマの茶色い眸に不意に入り込んだのは、星色の髪を揺らしにっこりと笑うルテだった。
「きゃあぁああああ!な、と、突然出てこないでよ!!」
「ごめんね?反対側にいたのに全然気づいてないみたいだったからさ」
エマは突然の出来事に思わず大声を上げて飛び起きた。
ルテはふふ、と笑ってエマの横に座ると、エマはすっと間を開けた。

「また会えたね」
「…そうね、2回目ね」
「ちがうよ、3回目…でしょ?」

ルテの言葉にエマは心の中でほわほわと考えていたことが形になった気がした。

「じゃあ…本当に昨日のは夢じゃなかったの…?」
「うん、夢じゃないよ」
「でも…あなた確かに流れ星が落ちた所から……!!」

エマが少し慌てて尋ねるとルテは口元に弧を描いた微笑みを浮かべながら夜空を見上げた。

「…ねえエマ、本当にここはずっと夜なの?」
エマは自分の質問をはぐらかされたかと思うとムッとした表情をするも、ルテの質問が予想外であったせいか反論する間もなく「え?」と声をおとした。
「それにあの大きな月も星も夜空を走る列車も…本当に綺麗だね……」
詩人の様に夜空に浮かぶ物や様子を綺麗だと淡々と告げるルテのお腹にフラジェントルはみえなかった。
(嘘はついてない…本当に夜空を綺麗だって思ってる…。
それに…こんな容姿の人初めてみた…きっとルテはこの町の人じゃないんだろうな)
そんなことを脳裏で考えながらエマは答えた。

「…そんなのあたりまえでしょ?世界は夜しかないんだから。」