第2話 「帰宅」
商店街を抜けて少し細い路地をはいると、赤いウロコ屋根の小さな家がある。古いのか、窓の立て付けが悪く、少しゆがんでいる。エマは丸い扉を開け、家に入った。
扉についていた鈴がシャラシャラと鳴る。
「あら?エマ帰ったの」
いつもの様に母親は夕飯の支度をしながら言った。エマはそれに返答せず階段を登り、自分の部屋に入った。
ベットに体をなげて、天窓から空を眺めた。
エマはいくら空を見ても飽きなかった。空は嘘をつかない。だから花が見えることはなかった。
もうしおれているフラジェントルの花を見るのには嫌気がさしていた。
(大人たちの花はみんな汚い…)
そして自分も汚い花になるのだろう、と半ば諦めて、またため息をついた。
母親が夕飯に呼ぶ声がする。
エマはゆっくり起き上がり、階段をおりていった。