フラジェントル

YUKI&ASUKAによるリレー小説

第12話 「太陽」

目をつむって、無理やり寝ようと試みた。
(だめだ、眠れない…)

こんな時は風にでもあたって気分転換した方が良い。エマは出窓から屋根へ登った。するとそこには先客がいた。空を見上げているのはルテだった。片膝を抱えて座り、白銀の髪が月に照らされて透き通るように光っている。
「あなたも、眠れないの…?」
エマはぎこちなく隣に座った。
「ああ、エマ。…うん。なんだか寝付けなくて」
ルテはまた空を見上げた。
「エマ、太陽を知っている?」
「タイヨウ?」
エマは初めて聞く言葉だったので首をひねった。
「太陽はね、光だよ。それも大きくて偉大な光なんだ。月や星は優しくて包み込んでくれるような光だ。でも太陽はね、直視できないほどの強い力を放つんだ。全てのものを生み出して、力を与えるような」
「そんな光、見たことないわ」

ルテは懐かしがるような優しい口調で言った。
「僕のいる世界では太陽が全てを照らしていたよ」
エマはルテの言葉に違和感を覚え、そしてはっとした。
「ルテ、あなたはどこからきたの?流れ星からやって来たのね」
「…うん。僕はソレイユという星から来たんだ」
「…ソレイユ…」
エマはそこにいる少年が別世界の住人であるという実感がすぐに湧かなかった。想像でしかなかった事が現実味を帯びて徐々に自分に流れ込んでくる。
「ルテは…嘘つかないのね」
「あれ?エマ信じてくれるの?」
ルテは子犬のような笑顔でエマの方向に体をむけた。
「だって、本当のことなんでしょう」

(フラジェントルが見えないから…)


静まっていた街が遠くの方からぽつぽつとろうそくの明かりが灯っていくのが見えた。
また、今日がはじまる。