フラジェントル

YUKI&ASUKAによるリレー小説

第8話 「エマとルテ」

エマは怪訝な顔をした。
こちらの機嫌は気にとめる様子もなく、常にルテは無邪気だった。
「この街の人は皆いい人だね」

その言葉を聞いて、疑うようにさらに眉をしかめた。
「そんなの上っ面だけよ。まさかあなた信じてたの?」
「え?街の人はみんな優しくしてくれたよ」
エマはため息をついた。
「だからそんなの本気で優しくしてるわけないじゃない。みんな見返りを求めたり自分をよく見せようとしてやってるだけよ」
「そうかなぁ。でも優しくしてもらって僕は嬉しくなったからいいや」
「脳天気…そのうち騙されるわよ」
「あはは、そうかもね。心配してくれてありがとう、エマ」
「べ、別にあなたの心配をしたわけじゃ…」

フラジェントルが見えなかった。エマは頬が少し熱くなるのがわかった。
その時、午後6時発の青色特急が汽笛を鳴らして空を走っていった。

「じゃ、じゃあ、あたし、帰るから」
エマは少し助けられた気持ちになって、いきおいよく立ち上がった。

「うん。またね、エマ」
ルテは笑顔で手を振った。