フラジェントル

YUKI&ASUKAによるリレー小説

第4話 「流れ星」

母に父親のことをだずねると決まってこうだ。
「お父さんはとても優しくて素晴らしい人だったのよ」
その話をする時、母のお腹に霧がまかれたようにフラジェントルが浮かび上がる。すべて作り話なのだ。そうであってほしかったという母の願望にすぎないのだ。
エマは、黙って母の嘘を聞くしかなかった。
母のフラジェントルは枯れてないものの、いつも疲れたように首をもたげていた。

(やっと今日が終わる…)

*****
街が静まりついた頃、エマはまだ眠れずにいた。窓辺わきの椅子にこしかけ外をぼんやりと眺めた。空はさっきから何も変わっていない。
ふいに、一筋の星が流れた。
「あ、流れ星」
エマが思わず口にした瞬間、星は草原の方向に落ちた。
小さく閃光が走ったが、すぐ落ち着きを取り戻した。エマは自分の目を疑った。まさか星が地上に落ちるなんて。

母にばれないように窓から抜け出し、草原まで走った。

そこに着くと、特に変わった様子はなかった。風が草を揺らし、髪をなびいた。
エマは辺りを見回した。草原には一本だけ太くて大きな木がある。その木の根元に白い光がぼんやりと見えた。エマの立っている位置から少し離れていたので目を細めて見つめた。
(人だ。人が立ってる。白く光って…男の子?)

その時、白く光っている少年が振り向いた。エマは硬直した。
少年は星のような明るい笑顔をみせると草原の向こうに消えていった。


はっと気づくとエマは自分のベットの中にいた。
(夢…?それにしては妙にリアル…)
顔を洗いながら思う。確かに私は草原にいたはずなんだ。

もう街は賑わっていた。エマは母におつかいを頼まれ、商店街へけだるげに歩いていった。