フラジェントル

YUKI&ASUKAによるリレー小説

第3話 「写真」

階段を降りていくと、ぼんやりと注ぐ白熱灯の温かい光と夕飯の香りに包まれたいつもの食卓へと着いた。
パンやスープが並べられている食卓から改めて周りを見渡すと、室内は母親の趣味で飾られた家具や色付きガラスの空きビンや観葉植物の土に星型やハート型の飾りを刺したものなどたくさんの小物にあふれ、お世辞にも整頓されているとはいえない。
揃えられた家具や小物のデザインはどれもピンクや黄色などの色合いをした可愛らしいものばかりで、エマの趣味とは合わないものばかりだった。
小ぶりのサイドボードの上に置かれた家族の写真はエマの小さい頃のものやエマと母親が写っているものばかりで、そこに一枚だけあるエマには覚えのない父親の写真にはたくさんのシワがよっていた。
そうこう考えているうちに支度を終えた母親も席に着き食事を始めた。

・・・・・・・・・・

「エマ、今日は何をして過ごしていたの?」
「いつもとおなじ」
「そう…エマは本当にあの草原が好きね」
「…うん」

二人の会話はあまり弾むこともなく、カチャカチャと食事をする音や食後に飲む紅茶を淹れるための二人分のお湯をいれたポットが湯気を出す音ばかりが部屋に響いた。

「ごちそうさま」

エマは自分の使った食器を流しへさげると重い足取りで自分の部屋へと戻った。
部屋に着けばまたベットに体を投げ、そのまま電気は点けずに天窓から注ぐ月明かりの下で寝転がるのが好きだった。
数えきれない星屑を眺めながら先ほど見た家族の写真を思い出し、母親のことを考え始めた。